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2016年1月29日 (金)

「号泣元県議」騒動に見る司法の劇場化(1)

 裁判所も「世間の顔色」を伺いながら仕事をする時代になったんですね。もちろん「市民が主役」の「裁判員裁判」が導入されたときから、司法のカタチは大きな「変容」を遂げたわけですが、最近は裁判所も「劇場化」の様相を呈することが多く、なんだかなぁ…と思ってしまう私です。

 前回の公判を欠席した「号泣元県議」に神戸地裁が「勾引状」を発付したことは異例の措置です。故意であれ過失であれ、在宅起訴された被告人が公判を欠席することは一定数発生します。しかし、たった一回の公判欠席を理由に勾引状が発付された案件は寡聞にして知りません。一般的な刑事事件では、在宅起訴された被告人が3回くらい公判に欠席しなければ勾引されることはないと言われてきました。

 在宅起訴された被告人が公判期日に出頭しなかったという苦い経験は、私自身が担当した事件でもありましたが、それで裁判所から勾引を示唆された経験はありません。良いか悪いかは別にして、今回の措置がこれまでの「実務慣行」から外れた異例のものだということがわかって戴けると思います。

 マスコミ報道が過熱する中で、世間もこの事件を大いに注目しています。前回もそうでしたが、1月26日の公判当日は、たくさんのマスコミ関係者が神戸地裁の周りを取り囲み、駐車場にはTV各社(NHK、MBS、ABC、KTV、YTV、SUNTV)の衛星中継車がずらりと並んで、リアルタイムにニュース映像を配信する準備が整っていました。

 通常の刑事事件の場合は、神戸地裁の記者クラブに所属するTV・ラジオ・新聞各社の記者が傍聴席の一部を占める程度です。法廷内のビデオ映像は「代表取材」として1台のTVカメラで撮影されます。その映像も公判が開始される直前を撮影できるだけで、その後はTVカメラは追い出されてしまいます。そんなわけで、普段はそれほどたくさんのマスコミが裁判所を囲むことはありません。

 ところが、本件に関しては、地元のTV・ラジオ・新聞各社だけでなく、東京のTV局やワイドショー制作会社などのTVカメラ、そして週刊誌や夕刊紙などのスチルカメラまでわんさかと押し掛け、地裁前の歩道は「すし詰め」状態でした。

 このように「ギャラリー」が余りに多過ぎると、裁判官も神経過敏になり感覚が狂うのかも知れません。「号泣元県議」が「公の場」に登場するのを待ちわびる世間に気を使ってのことか、あるいは前回の公判欠席で「なめられた」と思い頭に血がのぼったのか、いずれにせよ今回の勾引状発付は、裁判所の「行き過ぎ」だったのではないかと私は考えています。

 裁判所が「世間の目」なんぞ気にせず「超然」としていた時代は終わりを告げ、「市民に開かれた」裁判所は「世間の顔色」に気を配り、世間があっと驚く「パフォーマンス」にまで手を染めてしまうのか…などと嘆きたくなるのは私だけでしょうか(つづく)。

兵庫県弁護士会/神戸市中央区/藤本尚道法律事務所
職人かたぎの法律のプロ、弁護士藤本尚道です!
http://mbp-kobe.com/lawyer-fujimoto/

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