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2012年6月11日 (月)

「現地視察」がアブナイ

 私は、平成11年から10年以上にわたり、サービサーと呼ばれる債権管理回収専門会社の顧問弁護士を務めていました。顧問弁護士といっても、自分の事務所に居て、顧問会社職員からの相談を受ける…という悠長な仕事ではありません。当時、私が担当していた支店だけでも2,000件以上の不良債権の案件がありました。それら個々の案件につき具体的な回収方針を立てるため、週に何日かは支店に常駐したり、あるいは債権回収の現場にもみずから足を運ぶなど、かなり「フット・ワーク」を要求される仕事でした。

 そのサービサーの初代社長は、もう名前を知らない人はいない…と思われるほど超有名な弁護士で、日弁連でもバリバリ「主流派」の人物でした。ところが、意外に知られていませんが、この社長が「天才肌」ゆえか、たいへんに「気難しい」お方なのです。社長がうちの支店を「視察」される際には、支店長以下200名近い職員と、10名以上いた弁護士らが、細心の注意を払って資料等を用意し、質疑応答の準備まで万端整え、もう精神的にもみんなピリピリしておりました。

 しかし、「御前会議」を無事に終えて支店内の視察に入った際、社長の指摘する事項について支店長が返答に窮したことから端を発し、社長が機嫌をそこねてしまい、視察予定時間を大幅に繰り上げて早々に帰ってしまうという、不測の事態が生じました。社長が乗ったエレベーターのドアが閉まるのと、これを見送る支店長がその場で崩れるように倒れ込んだのがほぼ同時でした。その後、支店長は体調を崩し、何日か寝込みました。もう13年も前のお話ですが、支店長が崩れるように倒れ込む姿が、まるでスローモーション・ビデオを見るかのように鮮明に蘇ってきます。

 なぜ、このような「思い出話」をしたか…と言うと、菅前首相の福島第一原発への「視察問題」が頭をよぎったからです。一国の首相が、原発事故が起きたばかりの現場に直接足を踏み入れるなど、「正気の沙汰」ではありません。官邸周辺は、緊急時の首相の不在と、首相の「身の安全」にさぞかし気をもんだでしょうし、東電側とも連絡を密にして、それなりの「安全策」を講じたはずです。

 その一つが1号機のベント(排気)実施予定時間の「繰り下げ」です。本来なら、すぐにでもベントを実施するはずでしたが、「首相が帰京するまで待つべし」との配慮から、ベントを8時間半も大幅に遅らせた…と言われています。ベントが遅れた結果、水素爆発が(私は「水蒸気爆発」を疑っていますが)起きた…という分析・報道もありますから、菅前首相の誤った「ヒロイズム」が、福島第一原発の事故の傷をさらに大きく拡大させた可能性があるわけです。

 大地震や大津波の発生よりも、「首相の現地視察」の方が、福島第一原発にとっては「想定外」の事態だったのではないでしょうか。本当に困ったものです(涙)。

兵庫県弁護士会/神戸市中央区/藤本尚道法律事務所
職人かたぎの法律のプロ、弁護士藤本尚道です!
http://mbp-kobe.com/lawyer-fujimoto/

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