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2012年5月 2日 (水)

柔道必修化がアブナイ!

 昨年(2011年)10月の大阪地裁判決ですが、大阪市内の整骨院が主催する柔道教室で、小学1年生の男子児童(当時6歳)が、柔道練習中に意識不明になって死亡した事故について、業務上過失致死罪で起訴された元指導者に対し、罰金100万円の有罪判決が言い渡されました。この事件は、当初、大阪区検が2011年5月に略式起訴しましたが、大阪簡裁が通常裁判による審理が妥当と判断して「略式不相当」としたため、大阪地裁に審理の場が移されていたものです。

 判決は「柔道は事故が起きやすいスポーツ」と指摘したうえ、「被告人が男子児童に十分な受け身を習得させなかった過失は重い」と判断しています。また、男子児童の死亡原因については「頭を直接打たなくても、立ち技を連続してかけ、頭部を激しく揺さぶったことにより、急性硬下血腫が発生した」と認定しています。

 これまで、柔道の事故が起きると、柔道指導者側や学校側は、「引き手を十分に引いており、頭は打っていない」と主張して、「柔道が脳を損傷した直接の原因ではない」などと因果関係を否定するのが常でした。

 しかし、この判決では、頭を直接打ちつけなくても脳損傷が起きる事実を認め、柔道の立ち技で「急性硬下血腫」が発生し、これが男児の死亡原因となったと認定しています。これは「加速損傷」と呼ばれるもので、「頭に外力が加わった時に回転加速力が加わり、頭蓋骨内で脳が回転し、脳が回転することで硬膜と脳を繋いでいる橋静脈が伸展され、破断することによって起こる脳損傷」のことです。

 ところで、柔道指導者の多くは「加速損傷」という概念を知らず、頭部に加速力が加われば、頭を打たなくても脳内に損傷が起こり得る事実を認識していません。だからこそ、前記のとおり、柔道事故が起きるたびに、開口一番「頭は打っていない」と主張するのです。

 私自身も柔道の経験がありますのでよくわかりますが、大外刈りや体落しなどは、たいへん危険な柔道技です。頭を直接畳に打ちつけなくても、大外刈りや体落しなどの技を受けただけで、脳に「加速損傷」が起こりやすい事実は、もはやスポーツ医学の世界では常識とすら言われています。

 過去、柔道によって発生した「急性硬膜下血腫」などが大勢の人間の命を奪っています。昨年度(2011年度)だけで、学校での柔道事故のうち死亡事故が3件あったと報告されました。いずれも部活動中の高校1年生の男子生徒が死亡し、うち2人は大外刈りを受けて頭部を打ったことが、1人は熱中症が原因だと報告されています。 また、後遺症が残るおそれがある事故は中学・高校で合計3件あったとのことです。あくまで学校事故だけであり、民間の道場やスポーツ少年団などの事故は含まれていません。

 おりしも、この新年度(2012年4月)から、中学の体育で「柔道を含む武道」が必修化されました。これを目前に控えた3月9日、文部科学省は、全国の都道府県知事や教育委員会に対し、各学校において教員らによる指導体制や事故発生時の対応、武道場の安全管理などを点検し、十分な準備が整わない間は柔道の授業を始めないよう通知をしています。

 しかし、いったい何故、いま「武道の必修化」なのでしょう? 今後、学校事故が大幅に増加することを懸念するのは、けっして私一人ではないと思うのですが。

兵庫県弁護士会/神戸市中央区/藤本尚道法律事務所
職人かたぎの法律のプロ、弁護士藤本尚道です!
http://mbp-kobe.com/lawyer-fujimoto/

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