生活保護がアブナイ
吉本の売れっ子芸人の実母が生活保護を受けていたことで、「不正受給」の問題がクローズアップされています。本件で生活保護の受給が始まった時点では、何ら問題はなかった(不正受給ではない)と私は思います。当時は無名芸人で、年収100万円未満だったと言いますから、さすがに「実母に仕送りせぇよ」とは言えません。その意味で、吉本が「不正受給ではない」と断言したのも、この受給スタート時点での事情を見据えてのことでしょう。
しかし、その後、彼が幸いにして「売れっ子への道」を進み、母への「仕送り」が十分可能になった時点で、実母の生活保護にストップを掛けるべきだったと思います。彼のサイドから申し出ても良かったでしょうし、彼のテレビ等への出演が増えた段階で、役所サイドからチェックを入れるべきだったのかも知れません。
そもそも、生活保護受給に向けての「スタート時点」では、かなり厳しい審査を受けますが、一旦、受給要件をクリアしてしまうと、役所側のチェックは甘くなりがちです。仮に、世帯内に一人でも稼働可能な家族があり、何らかの収入を得ている場合には、適正額との「差額」のみが生活保護の対象となるため、毎月シビアな査定作業が行われます。ところが、彼の実母のように単身で病身というパターンでは、毎月の収入チェックは自然とおろそかになりがちです。ましてや、扶養義務者の収入状況まで目を届かせるのは極めて困難…と言うのが実情でしょう。
実は、親族間の扶養義務は、とても微妙なものを含んでいます。そもそも自分の実の父母に対する関係では、一般的に扶養義務が否定される理由はあり得ません。しかし、親子間に何らかの「確執」があって、日頃から互いに何の行き来もないような親子関係の場合にまで、扶養義務の履行を「強要」するわけには行きません。
また、いったん「当然」になってしまった「給付」を、「もういらない」と言うためには、かなりの「勇気」が必要でしょう。芸能界での「浮沈」は誰にも予測できません。「よっしゃ、売れたぁ!」と思っても、「一発屋」ですぐに沈んでしまわないとも限らないからです。その意味で「もう大丈夫」と思える時期が何時か?…の判断は結構むずかしいと思うのですよね。
彼は、自分が「売れた」時期に遡って、保護費の返還をしたいと言明しています。たとえるなら「梅雨入り」「梅雨明け」が何時だったか…すら、あとで判るようなご時世ですから、こういった形での「謝罪」や「修復」も、許されて良いのではないかと私は思います。
逆に、本来、生活保護を受けるべき人々が申請をためらい、あるいは行政サイドが保護すべき人々を見捨てるような社会にはなって欲しくありません。そのためにも、はびこっている「不正受給」の糾弾は絶対に必要だと思いますが、本当に糾弾すべき「不正受給」は、実は私たちの目には見えていない…と思うのですけれど。
兵庫県弁護士会/神戸市中央区/藤本尚道法律事務所
職人かたぎの法律のプロ、弁護士藤本尚道です!
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